妖しい金魚と美しいお嬢様 古典文学を見事コミック化!大正殉愛 金魚撩乱 ヨシカズ先生
今回は、大正殉愛 金魚撩乱という作品を紹介したいと思います。実は先日、たまたま電子書籍サイトをまわっていたら気になる内容で試し読み!そしてまとめて3巻購入しました。
この作品は、古典文学を独自の解釈でコミカライズしたもの。登場人物などは原作とは違いますが、原作では詳しくは書かれていない人物の背景をよみ、ヨシカズ先生がさらに深く心理描写を書きました。
レビューなどをみるととても評判がよく、ドロドロしている展開ではあるのですが、とても読みやすく後味も悪くありません。
題名から悲劇性がありそう……と心配される方もいるかと思いますが、賛否両論はあるとは思いますが、作品としては納得のラストですのでおすすめしたいです。
試し読みでチェック!大正の世界
表紙から美しい世界であるのはわかるのですが、やっぱり作品の癖などあるとは思うので、まずは試し読みがおすすめです。
大正の世界は、身分制度があり決して身分をこえて結婚はできはしませんでした。女性など自由恋愛などできません。そんな女の情、愛、性……そんな女たちにいらだちながらも魅了されてしまう男の本能。
耽美的な表現も味わえ、試し読みでもいっきに先を知りたい!と思いました。
一話ならpixivでも読むことができます。
#創作男女 大正殉愛 金魚撩乱 1話 - よしかずちゃんのマンガ - pixiv
試し読みは多数の電子書籍サイトでできます。
原作の岡本かの子とは?
ネットでも青空文庫の棚で無料公開されているので、原作を読むことができます。
原作者の岡本かの子さんとは、大阪の太陽の塔で有名な岡本太郎氏の実母です。岡本太郎さんをうんでから精神的な病にかかり、不倫をしてしまうのですが、その不倫相手と一緒に同居!それからもなかなか破天荒な性格だったようです。
それから海外に渡ったり、小説家の活動をはじめたりとアグレッシブなようですが、岡本太郎さんの幼少期は壮絶だったと著書でかいてあります。
岡本太郎さんもなかなか個性的で、芸術家なイメージですがお母さんのほうが、いろんな意味でぶっとんでいたようなのです。
岡本太郎さんの著書は図書館などでも読めるので、岡本かの子さんについて知りたいならこの本もおすすめ。
岡本かの子さんはの写真をみると、ちょっとブルゾンチエミさんに似ているなと思いました。モダンでおしゃれ!
岡本太郎さんの作品はこちらからみることができます。
岡本太郎記念館 | The Taro Okamoto Memorial Museum
そういうことで、岡本かの子さんは大正・昭和時代の人ですが自由人で、子どもや家庭を犠牲にしても恋愛を優先している印象です。しかしそこには、女だからこその不自由もあったと思われます。優秀であっても、活躍はできない……自由に生きられない。そんな葛藤を感じる作品のひとつとして、金魚撩乱もあるのかなと思いました。
金魚撩乱 1巻のあらすじ(ネタバレが含まれるので注意!)
今年も金魚をつくれなかった――――呆然とみる方向には、立派な崖の上のお屋敷。そこには、真佐子が住んでいます。
大正三年の春、金魚屋の復一は近所の子供にいじめられていました。金魚くさいといわれるのです。育ての親は、復一の両親から金魚屋をひきついだものの、金持ちの愚痴ばかりで仕事もやるきはありません。しかし、崖の上のお屋敷は金魚のお得意様。
ある日、お屋敷のお嬢様が訪ねてきました。そして復一との運命的な出会いをするのです。復一のいら立ちは真佐子に向けられます。陰で陰湿ないじめをしますが、不意にやり返されたところから立場は逆転…真佐子に魅了されるのです。
そして大正七年、中学へいった復一は優等生。しかし金魚屋では高等学校へ行っても無駄といわれます。同級生の日野と一緒に、キネマに行くとそこに真佐子がいました。日野と真佐子は婚約者同士で、お見合いを壊してほしいと日野に頼まれます。
金魚撩乱 2巻のあらすじ
日野に言われて見合いを壊しにいく復一ですが、ほかにも婚約者候補は3人いました。テニスをしたり食事をしたり、わきあいあいとしますが、候補者はみな真佐子の財産が目的でした。真佐子は復一がいいと言いますが、結果的に進路に出資するなら復一ということで、高等学校への出資を受けることになります。
真佐子と復一は、陰で逢瀬を重ねますが、日野との婚約は受け入れている真佐子。人間は不自由なのだからと、復一を好きでありながら、婚約するつもりです。日野は復一と真佐子を邪魔をするために、婚約には乗り気です。そして日野と復一は絶縁、真佐子は日野と復一の引き裂いたのです。しかし結ばれぬ運命、金銭的に苦労をして破滅するより、復一に近い人間を排除するという真佐子でした。
金魚撩乱 3巻のあらすじ
復一と真佐子は結ばれます。一晩だけの秘密、復一は真佐子のような金魚を作り出すことを決めます。真佐子のような金魚を作るために、必死で研究に没頭する復一。東京は地震で大変な被害があることを知ります。しかし日野からは来るなという電報のみ。あれから二人とは会うことはありませんでした。
大正13年、真佐子と日野の子ども・咲也子がうまれていました。4年ぶりの再会です。日野からできちゃった結婚したてん末を聞きますが、真佐子と寝たのは復一の名残を日野が感じたいからだということ。日野もまた復一に思いがありました。真佐子も復一が金魚を作ってくれるのを待ちます。自由な金魚を作ってほしいと。そして再び、真佐子と復一は密会し、子どもができます。
嵐があり金魚がだめになりますが、そこからできた自然な金魚がまるで真佐子のような美しさ。復一は金魚を完成させることができました。
金魚撩乱 感想
1巻では、真佐子と復一のこじれた人間模様がかかれます。復一は、毎日愚痴を聞かされてすっかり金持ち嫌いになったところ、何も不自由がない真佐子に出会うのです。金魚のような美しさであり、何を考えているかいまいちわからない真佐子ですが、とにかく綺麗なんです!最初はいじめられても黙っていますが、復一にやり返したあとは、どんどん美しくなり、復一を魅了していくのですよね。
こんなに女って変わるもの?!とびっくりしますが、真佐子にとっても何か自信がついたのかもしれませんね。子どもが女へ変貌し、男性を誘惑しつつも、どこか純粋で、悩ましく……あやしい女性の性を描いていると思います。
女性嫌いであるのに、真佐子のことが嫌いになれない復一の葛藤もまたすごいリアル!日野は家庭環境が複雑で女遊びばかりしていますが、復一のぶれなさにすっかり魅了されてしまうのですよね。日野を介して、真佐子と復一は変な三角関係にはなるのですが、精神的な結びつきはだんだん強くなっていくのがわかる作品です。
真佐子は金魚を自分に見立て、復一に自由で美しい、完璧な金魚を作ってほしいと言っていますが、それもどこまで本気なのか?と思います。最初は口実にすぎなかったとは思うのですが、後半は復一と真佐子の目標になります。
作中の作者の推測では、金魚を溺愛している真佐子の父もなかなかの変人だと記述してありました。妻を金魚だと思っている節がある。
復一も真佐子の父も、金魚を愛しい人に重ね、没頭していくあわれな男たち。そして不自由な世の中、美しさを武器に、ひょうひょうと生きていく女たち。それぞれの悲しさや苦しさが美しく描かれています。
あらすじでは書ききれない、人間のリアルな葛藤。そして美しい描写……ぜひ漫画をとって読んでほしいです。
情念を感じる恋愛劇作品は?おすすめ
今は少なくなってきていますが、もともと恋愛ってドロドロしている描写も多いですよね。
大正だけを感じるわけではありませんが、理不尽な世の中でしなやかに生きる女性たちの漫画なら、「エロスの種子」がおすすめです。
もちろん大正時代もあり、昭和初期、昭和後期などさまざまな時代背景があり、楽しめる漫画です。
ドロドロした恋愛劇をみたいなら、「私たちはどうかしている」もおすすめ。現在一部が完結し、二部がスタートしていますが、昼ドラのようなドロドロな展開です。誰が味方なのか?誰が敵なのか?どきどきしながら読めます。和菓子屋が舞台で、かつて母親が人を殺してしまったという疑惑から逃げていた女性。その女性と和菓子屋の若旦那が結婚することに?!なぜ母親が殺人をしてしまったのか……?そこにはいろんな思惑があったのです。
漫画だけでなく、乙女ゲームもおすすめのものがあります。
「蝶の毒 華の鎖~大正艶恋異聞~」
この耽美な世界は、人気がある乙女ゲームだけあった大変おすすめですね。プレイしたのは大人向けゲームだったので、コンシューマー版では多少修正されてたとは思うのですが、なかなかドロドロして内容です。ですが癖になると思いますよ。
いろいろ乙女ゲームをプレイしました。乙女ゲームも楽しい!!
おわりに
今回は、大正殉愛 金魚撩乱をご紹介しました。文学作品ですが、作者さんの深い考察によりより分かりやすく、リアルな心情が美しい作品です。作中の人物解説も、とても読みごたえがあり、漫画以外でも楽しめる本でした。
昔は二次元なんて言葉もなかったですから、恋愛って人生の比重で大きな部分だったと思います。娯楽もそうないですからね。ですから恋愛に関して考察している作品は多かったですし、実は昔のほうが不倫などもあったのかなと思いました。
耽美、大正、金魚、などなど美しいワードがごろごろあるので完結された作品を読みたいならおすすめです。
あと蛇足になりますが、金魚といえば美しい美術館ができて気になっています。
アートアクアリウム 2019【公式PV】Japanese Ver.1229
海外の人も話題にしそうなアクアリウム。金魚といえば日本の文化のひとつなのかもしれません。
また大正殉愛 金魚撩乱が掲載されていた「サイコミ」ではいろんな連載作品を読むことができるようです。
大正を感じたいなら 「煙と蜜」もおすすめ
夫を討った男に嫁いだ妻の話 「悪し妻かたり」
人間の愚かさ、汚さ……そしてあたたかさを知るホラーおすすめ10選
今、ナンバーワン注目!花野井くんと恋の病 おススメ
等身大の高校生たちのゆるいスクールライフ
耽美な世界を知りたいなら エロスの種子もおすすめです。
そのほかの漫画もご紹介しています。